遺言書作成・相続手続 田中司法書士事務所
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遺言の基礎知識

(1)遺言とは?

遺言とは、生前自分が築き上げてきた財産の処分方法等、ある人の最終意思の実現をその死後においても保障するための制度であって、法律の規定に従ってなされる単独行為です。
遺言は、生前処分の場合とは異なり、遺言者の死亡によって始めて効力を生ずることとされています。しかし、遺言の真否や内容については、遺言が効力を生じた後(つまり、遺言者が亡くなった後)に直接本人に確認することは不可能ですし、また、他人によって改変されるおそれも少なくないことから、遺言の作成は民法に定められている一定の方式に従ってなされることを要し、これに反してなされた場合にはその遺言は無効なものとなるとされています。
遺言の方式については、民法上、普通方式の遺言と特別方式の遺言に大別され、原則として普通方式の遺言によるものとされています。詳細については遺言の種類のページでご紹介しますが、普通方式の遺言としては、@自筆証書遺言、A公正証書遺言、B秘密証書遺言の3種類が定められており、他にも、特別方式の遺言として、@危急時遺言とA隔絶地遺言の2種類が予定されています。


(2)遺言をするために必要な能力

一般に、人が有効な法律行為をするためには、行為の性質を判断する能力(これを、”行為能力”といいます。)が必要であるとされており、これを有しないにも関わらずその人がした法律行為は、取り消すことができたり、無効な行為ということになってしまいます。
人の行為能力については、通常は成年(満20歳)に達すると得られるものとされています。ただ、遺言は、上述のとおり遺言者の最終意思をできるだけ実現するための制度ですから、遺言をできる能力は必ずしも普通の行為能力と同等である必要はありません。
そこで、民法は、遺言という行為の性質が判断できる能力(”意思能力”)があれば遺言をするには十分であると考え、満15歳になれば遺言をすることができるとしています。また、事理を弁識する能力が不十分であるとして、法律行為の制限を受ける成年被後見人(従前の禁治産者)や被保佐人(従前の準禁治産者)についても、遺言能力は認められています(下記参照)。

未成年者であっても、満15歳に達すれば、法定代理人の同意を得なくても単独で遺言することができます。


成年被後見人は、事理を弁識する能力が一時的にでも回復した時は、2人以上の医師の立会いを得れば、成年後見人の代理を要せず単独で遺言することができます。


被保佐人は、保佐人の同意を得ることなく、常に単独で遺言することができます。


(3)遺言ですることができる事項

遺言によってすることができる事項は、法律によって下記の行為に限定されています。
下記の事項以外の事項は、たとえ遺言書に記載しても、法律的には意味を有しない、言ってみれば亡くなった方から相続人へのメッセージとしての効力しか生じません。

未成年後見人、未成年後見監督人の指定
 遺言者に未成年の子がある場合、自己の死後、その子の後見人や後見監督人になるべき者を指定することができます。ただし、この指定ができるのは、この子に対して最後に親権を行う者であり、かつ、管理権を有する者であることが要件となりますから、実際は父母の一方が死亡していたり、離婚によって父母の一方のみが親権者となっているときなどに限定されます。


相続分の指定とその指定の第三者への委託
相続分は、民法によっても法定されていますが(法定相続分)、遺産の処分権は本来亡くなった方の自由な意思決定に基づいて行われるのが理想ですから、遺言によって相続分の指定がなされていれば、この指定が優先されることになります。ただし、この相続分の指定も、遺留分の規定に反することはできないものとされており、もし、各相続人の遺留分を侵害する指定がなされたときは、相続人からの遺留分減殺請求によって若干の修正がなされる場合もあります。


遺産分割方法の指定とその指定の第三者への委託
相続が開始すると、遺産はとりあえず共同相続人の共有財産ということになり、これが遺産分割されることによって、具体的に各相続人に分配され帰属することになります。遺産分割は、通常、共同相続人の協議や裁判所の審判で行われますが、この分割について共同相続人間で争いが起こるのを未然に防止するためにも、たとえば「この土地は相続人Aに、この土地は相続人Bに」といった形で指定することもできます。


遺産分割の禁止
遺産について、共同相続人間で争いが起こるであろうことが予め予想される場合や、遺産を直ちに相続人に分割帰属させることが望ましくないと考えられるときは、5年以内の期間であれば、遺産の分割を禁止することができます。


相続人相互間の担保責任の指定
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売買契約における売主と同様の担保責任を各相続分に応じて負うことになります。これは共同相続人間の公平な利益分配を考慮したものです。また、遺産分割にあたって、共同相続人のうちの1人が遺産中の債権を取得することになった場合、他の共同相続人は分割時における(弁済期未到来の債権については弁済期における)債務者の資力について担保責任を負うことになります。しかし、遺言によってこの担保責任を変更することができます。


遺言執行者の指定と、その指定の第三者への委託
遺言の内容を実現するためには、遺言の執行を実際に行う者がどうしても必要になる場合があります。遺言執行者は、利害関係人が家庭裁判所に選任請求をすることによって家庭裁判所が選任することも可能ですが、予めこれを指定したり、指定自体を第三者にしてもらうように遺言することができます。


遺贈の減殺方法の指定
  遺留分を侵害する贈与や遺贈は、遺留分権利者によって減殺されることがあります。この減殺の順序については、民法に規定が置かれていますが、遺言によってこれと異なる順序で減殺するように指定することができます。


上記の行為は、遺言によってのみすることができる行為です。
一方、下記の行為については、遺言によってのみではなく、生前行為によってすることも可能な行為です。

認知
認知とは、婚姻外で生まれた子と、法律上の親子関係を創設するための制度です。認知がなされることにより、婚姻外の子であっても相続権など子としての権利を取得します。


推定相続人の廃除とその取り消し
推定相続人の廃除とは、被相続人に対して一定の非行がなされた場合、その者の相続権を予め奪っておくための制度です。



(4)遺言の取消し(撤回)について

遺言をした後であっても、遺言はその人の自由な意思によって、何度でも、取り消すことができます。
仮に、遺言を取り消したり変更したりすることをしない、という約束をしても、それは遺言の撤回権の放棄にあたり、法律的には無効な約束となります。


遺言の取消しは、次のような一定の方法によることが求められます。

前の遺言を撤回する旨の遺言による取消し
前の遺言を撤回する旨の遺言により前の遺言を撤回することができます。
例)「平成年月日作成の遺言は、撤回する。」


前の遺言と抵触する内容の遺言による取消し
前の遺言と矛盾する内容の遺言により、その矛盾する部分は前の遺言が撤回されたものとみなされます。
例)前の遺言である遺産をAに相続させるとしていたのに、後の遺言でその遺産をBに相続させるとした。


遺言と抵触する内容の生前行為による取消し
前の遺言と矛盾する生前行為により、その矛盾する部分は前の遺言が撤回されたものとみなされます。
例)遺言である遺産をAに遺贈するとしていたのに、その後生きているうちにその財産をBに贈与した。


遺言書を破棄破棄することによる取消し
遺言者が故意に遺言書を破棄した場合、その破棄された部分について遺言が撤回されたものとみなされます。


遺贈の目的物を破棄することによる取消し
遺言者が遺贈の目的物を故意に破棄した場合、その目的物について遺言が撤回されたものとみなされます。





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